シルクとコットン
- 2016/09/06
- 00:00
このお話は、ユノさんとチャンミンさんのお話です。BL色は薄目です。ストーリーの展開上、ユノさんと女性の絡みがあります。もろもろ大丈夫な方のみお読みください。__________________ファッションショーの舞台裏は、まさしく戦場だ。街を歩けばオトコどもが口笛を吹き、一夜限りでいいからお手合わせ願いたいと舌なめずりするに違いないいいオンナたちが、Tバック一枚のあられもない姿で走り回っている。おれ...
シルクとコットン 2
- 2016/09/07
- 00:00
まだ、よく回らない頭で考える。あのじいちゃんが倒れて、おれに知らせが来たってことはよっぽど悪いんだろう。両親が事故で亡くなって、親代わりにおれを育ててくれたじいちゃん。気丈で、おれがデザイナーになりたいって反対されるのを覚悟で言い出したときも、一度きりの人生だから後悔のないように生きろって背中を押してくれた。こっちに来て、言葉もろくにわからないし寂しくて泣きながら電話したら、その程度の覚悟しかない...
シルクとコットン 3
- 2016/09/08
- 00:00
落ち着いたらソヨンもいっしょに行くと言い張って、手早くふたり分の荷物を詰めてくれてる間に、チケットの手配と携帯の手続きをし、その日のうちにソウル行きの飛行機に乗れた。「あんたの実家ってソウルから遠いの?」「それほど遠くはないけど、田舎だからびっくりするなよ。」最初はひとりのほうがいいと思ったけど、話し相手がいて気が紛れて、ソヨンがついてきてくれてよかったと思った。ソヨンとは、同じ業界で同じ国出身で...
シルクとコットン 4
- 2016/09/09
- 00:00
上目使い・・・上目使い?ん?あれ?おかしいな、どう見てもこいつのほうが背が高いのに?「おまえ、大きくなったなあ。おれよりデカいじゃん。まあ、昔から大食いだったから」チリンチリンどこかで小さな鈴の音が鳴ると、チャンミンはハッとして緊張したように見えた。「大旦那さまがお目覚めになられたようです。すぐにお会いになられますか?」「あ、ああ。」時差ボケでぼんやりしているせいか、自分が帰国した目的をすっかり忘...
シルクとコットン 5
- 2016/09/10
- 00:00
おれの記憶の中のじいちゃんの手は、大きくて分厚くて節ばった働く男の手だったのに、無意識に掴んでいたいまのじいちゃんの手は、シワだらけで握る力も弱弱しい年寄りの手だった。おれの頭をガシガシと不器用に撫でた手、おれのケツを容赦なく叩いた手、おれが旅立つ日に頬を包んだ優しい手はもうどこにもないのか。おれが離れていた10数年が、これほどまでにじいちゃんを変えてしまったんだな。「ウ~~~」おれにではなくチャン...
シルクとコットン 6
- 2016/09/11
- 00:00
「何なの、あいつ?感じ悪ぅ。」「そう言うなよ、おれの幼なじみなんだから。」「幼なじみ?使用人の子でしょ?」使用人の子?そうか、そう言われたらそうだけど・・・「そういうの、意識したことなかったな。メシだってみんないっしょにここで食ってたし。アジュンマといっしょに台所の裏の部屋に住んでてさ、いっつも『ヒョン、ヒョン』って後ろ追いかけてきてた。めちゃくちゃかわいかったんだ。」「ふーん、いまは愛想なしだけ...
シルクとコットン 7
- 2016/09/12
- 00:00
「大旦那さまが倒れられたのはこれが初めてじゃありません。5年ほど前にも一度倒れられましたが、そのときはみんなで食事中に箸を使えなくなって、すぐに救急車で病院に担ぎ込んだから血栓を溶かすことができて後遺症も残らなかったんです。」そんなことがあったなんて、知らなかった。「でも、大旦那さまはご自分が倒れられたことで気弱になられて、パク・チソンさまを呼び戻されました。」パク・チソンおじさん、父さんの妹、へ...
シルクとコットン 8
- 2016/09/13
- 00:00
5年前といえば、おれは必死でもがいていたころだ。じいちゃんとは、泣き言の電話をして叱られてから一度も連絡を取っていない。だから、おれじゃなくおじさんを呼び戻したんだろう。おれ以外でじいちゃんの身内は叔母さん夫婦しかいないから。待てよ?さっきじいちゃんは、仕事放り出して帰ってきたのかって言ったよな?おれに知らせてきたのはじいちゃんの意思じゃないのか?「ねえ~」となりの布団から不機嫌な声が聞こえる。「...
シルクとコットン 9
- 2016/09/14
- 00:00
おじさんはわざとらしく腕時計を見て、よく意味のわからないことを言いながらバタバタと帰っていった。渡された書類にざっと目を通すと、我が社のおれの持ち株の譲渡契約書と、じいちゃんの遺産(まだ生きてるぞ)を放棄するという念書、それに我が社に関する権利を主張しないという覚書・・・「なんだこれ。」こんな重要な書類に目も通さずにサインさせようとしてたのか、あのクソ野郎!てか、おれが株持ってんのか?聞いてねえぞ...
シルクとコットン 10
- 2016/09/15
- 00:00
チャンミンが書いたメモ用紙を手に、部屋に戻って出かけると言ったら、ソヨンもいっしょに行くと言うから、着替えてふたり外に出た。「うわぁ、ホント広いねえ。」庭を見回してソヨンが大きな声を出す。「田舎だからな。」おれは平然とそう答えたけど、太陽の光の下で見た家の庭は、見慣れたあのころの庭とはまったく様子が違って愕然とした。年に一度は剪定していた植木は伸び放題で不格好、雑草がはびこり、母さんが手入れしてい...