汗
- 2017/09/23
- 23:00

除隊して初めての仕事。正確には『仕事』ではない、なぜならそこになんら金銭は発生しないから。おれがどうしてもやりたくて、いや残しておきたくて、ムリを言って引き受けてくれる人を探してもらった。探してくれたマネヒョンの話では、ノーギャラはクリアしても、作品が世に出ないとわかってる仕事なんかしたくない、と断る人がほとんどだったらしい。プロだから当たり前かもしれないし、芸術家にとって作品は発表してこそ、なん...
汗 2
- 2017/09/24
- 23:00

そこはスタジオではなく、何の変哲もないちょっと広めのワンルームマンションだった。衣装なんていらないけど、向こうから素肌にYシャツって指定があったから、とりあえず着てきた。下はジーンズじゃないパンツで、これも指定。ムリを頼んだ代わりに、コンセプトは向こうに任せると言ってある。中に入ると、見慣れた撮影準備の真っ最中で、指示を出してるのは小柄なオバサンだった。それにしても、この部屋暑くないか?まだ4月だっ...
汗 3
- 2017/09/25
- 23:00

「オッケー、そろそろいってみようかぁ。ユノさんは真夏に仕事から家に帰ってきたところね。先ずはキッチンでお水飲んでー。カメラ見ないでねー。」なるほど、ストーリーに沿うわけか。「いいよー、ステキステキ。音楽かけて。」並んだCDはジャズ?適当に選んで、機械に入れた。自然に動く身体、連続で切られるシャッター、緊張感が心地よい。リハビリにちょうどいいかも。「窓から外見てー。」外、って言われても駐車場があるだけ...
汗 4
- 2017/09/26
- 23:00

「はい、休憩ー。ユノさんにお水ー。」持ってきてくれたグラス片手に、画像チェックしてるのを後ろからのぞき込む。背中がぞわりとした。口調と纏う空気の柔らかさにごまかされちゃいけない。この人は真剣に撮ってくれてる。仕事じゃなくてもプロはプロ、気を抜いてはいられない。「さあて、本番いこうかー。」Yシャツのボタンに手をかける。「ゆーっくり、ゆっくりねー。」汗で張りついてうまく脱げない。「いいよー、そのまま床...
汗 5
- 2017/09/27
- 23:00

「おー、ウワサ通りだねー。りっぱりっぱ。」暑さのせいか赤くはなってるけど、照れるでもなく、茶化すように言いながらなおもシャッターを切り続けてるのは、マジでオッサンだな。おかげで恥ずかしさなんて微塵も感じないけど。「ポージングしてみてー。」壁際にあった姿見に、自分の裸体を映してみる。うん、我ながらいい身体してる。風呂場の鏡で見たのとは違うのはなんでだろう。「ユノさん、ベッドに大の字に寝てほしいんだけ...