心の声に耳をすませて 24
- 2015/12/20
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『心の声に耳をすませて』第2部を始めます!これまでのお話をまだお読みでない方は、カテゴリー『心の声に耳をすませて』からどうぞ。_______________パリを夜に飛び立った飛行機が、仁川空港に降り立ったのは翌日の夕方だった。ぼくは、初めての海外、初めての告白、初めてのキス・・・たった数日でいろんな初めてを経験して、まるで子どもから大人になったような気分だった。パリから戻る機内でも、生まれて初め...
心の声に耳をすませて 25
- 2015/12/21
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ぼくたちは、どういうわけか血の繋がりがある人の心の声は聞くことができない。ぼくは不思議に思って訊いてみたけど、父さんもおじいちゃんも知らないと言った。理由については伝承がないらしい。身内で胸のうちの探り合いをしないようになのかなって思うけど、血の繋がりのない夫婦でも聞こえなくなるらしい。いつからっていうのは個人差があるみたいで、おじいちゃんは結婚したときから、父さんは結婚前から聞こえなかったと言っ...
心の声に耳をすませて 26
- 2015/12/22
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静かな会議室に、ユノさんがキーを叩くカタカタという音だけが流れる。普段はかけていない眼鏡をかけてパソコンに向かう姿はカッコイイとしか言いようがなく、あの、長くて節の高い指が忙しなくキーを叩いているんだと思うと、想像するだけでうっとりした。契約書の内容を確認して、フランス語に翻訳してくれる間、ぼくは契約書を読むふりをしてチラチラとユノさんを盗み見る。約束の少し前にロビーまで迎えに行って、すぐに現れた...
心の声に耳をすませて 27
- 2015/12/23
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プリントアウトしたものを校正してもらい、間違いがないのを確かめてから綴じた。「今日はキュヒョンさんはいらっしゃらないんですか?」「キュヒョンは午後からデパートに出向いてるんですけど。」横から、時間がかかりそうだから直帰すると連絡が来たと教えてくれた。(そうか、残念だな)何が残念なんだかちょっとムッとしたけど、ぼくはキュヒョンがいなくてよかったと思ってる。だって、ぼくは表情管理ができてる自信ないし、...
心の声に耳をすませて 28
- 2015/12/24
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ソウルにこんなお店があったなんて知らなかった。ぼくは日本に行ったことがないからわからないけど、異国情緒あふれる落ち着いた空間で、スタッフさんたちはみんな『着物』っていう日本の民族衣装を着て丁寧にお辞儀してくれた。靴を脱いで上がった個室には『畳』が敷き詰められていて、青臭い匂いがする。座布団に胡坐をかいて座ると、低いテーブルを挟んだ向かい側にはユノさんが座っていて、妙な緊張感で顔がこわばってないか心...
心の声に耳をすませて 29
- 2015/12/25
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「チャンミンさん、まだ帰らなくていいですか?」たっぷりと時間をかけていただいた夕食のあと、ぼくはまだユノさんと離れたくなくて、なんて言ったら引き留められるかと考えていたときに、腕時計をさりげなく見たユノさんがそう言った。「はいっ!」もちろんです!って言いそうになったのを危うく飲み込んで食い気味に返事すると、ユノさんはまぶしそうに目を細めてぼくを見る。「ここから歩いて行けるところに、僕の従兄がやって...
心の声に耳をすませて 30
- 2015/12/26
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目の前でシェイカーを振る美しい人に見とれていた。薄く瞑ったまぶたさえ美しいと思うその人は、ユノさんと従兄だと聞いても美しさ以外には共通点を見つけられない。明るい茶色の髪には柔らかいウエーブがかかっていて、ユノさんよりは小柄で華奢な感じがする。小顔なのは似てるかな。そんなことをぼんやり考えてる間に、出来上がったカクテルが、美しい人の手によってぼくの前に差し出された。「どうぞ。」「ありがとうございます...
心の声に耳をすませて 31
- 2015/12/27
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R-12(くらいかな?)表現があります。もろもろ大丈夫な方のみ、お読みください。_______________「ごめん、ちょっと一服してくる。」ぼくたちの前にグラスワインをふたつ置いてから、タバコを吸う仕草をしたヒチョルさんは、酒瓶が並んだ棚の横にある扉の中に消えていった。「ここって禁煙なんですか?」「え?ああ、そうじゃないですよ。たぶん気を利かせたんだと思います。」なるほど。「チャンミンさんとここに...
心の声に耳をすませて 32
- 2015/12/28
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アンリさんはユノさんが送ったメールに待ち構えていたように即返信をくれて、契約書が出来上がった翌々日には機上の人となっていた。仁川空港の到着ロビーでユノさんとふたり並んで待っていたら、あちらこちらで女性たちのグループがぼくたちに視線を投げてくる。(あの人たち誰?)(かっこいい!芸能人じゃないよね?)(あたし目の大きなほうが好み)(すんごいセクシー)(抱かれた~い)その辺にしといたほうがいいよ、心の声...
心の声に耳をすませて 33
- 2015/12/29
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ユノさんが運転する車の助手席に乗せてもらうのは、今日が初めてだ。だってこの間の初デートのときは、お酒を飲むからってタクシー移動だったから。今日ぼくを拾いに来てくれたユノさんは、アンリさんたちがたくさんの荷物を持ってくるだろうとワンボックスカーに乗ってきた。大きな車に初めて乗るぼくのために、手を貸してくれて、シートベルトを締めてくれて、一瞬だけ頬にキスしてくれたからぼくは真っ赤になってしまったんだけ...