命綱 161
- 2019/07/15
- 23:00
7月ですが、お話は真冬です(笑)__________________チャンミンがウチの専属技師になってから、踊り子たちの意識が上がっている。それはチャンミンが照明だけでなく、演出も手掛けてくれてるからだ。ダンスは素人なのに、ちょっとしたアドバイスで踊り子たちを輝かせることができるんだ。おかげでお客は毎日大入り、貰うチップも増えてるらしい。「オッパ、見てみて~ 今日の上がり、すごいでしょ?」「ええ、...
命綱 162
- 2019/07/16
- 23:00
ふたり体を寄せ合って自宅への道を急ぐ。真夜中で人通りがほとんどないってこともあるけど、この辺りではおれたちはカップルとして認識されてるから、恥ずかしいことも気まずいこともまったくない。「「ただいま~」」「おかえり。寒かっただろ、早くスープ飲んで温まりな。」「お母さんありがとう。いただきます。」「はいはい、後片付けは頼んだよチャンミン。」「はーい。」相変わらず、チャンミンと養母は実の母子みたいに仲が...
命綱 163
- 2019/07/17
- 23:00
「ドンへ先輩から連絡がきてね、」「ドンへ?めずらしいな、元気なのか?」ドンへはチャンミンの前にウチの担当だった照明技師で、チャンミンが会社を辞めたあと、釜山に転勤になった。「うん、元気そうだったんだけどね。」ん?なんだか言いにくそうにしてるけど、なんかあるのか?「相談したいことがあるから釜山に来てほしいって言ってるんだ。」「相談って。チャンミンに来いって言ってんのか?」思わず声が尖ってしまう。おれ...
命綱 164
- 2019/07/18
- 23:00
ウチのソルラルは毎年、カレンダー通り前日から翌日までの3日間休みだ。連休初日に養母と買い物に行き、2日目に茶礼をして、3日目は遊びに行く。つまり手っ取り早く抱けるヤツを見つけに行ってたんだけど、もうその必要はない。それに今年はふたりで旅行に行くと決めていたから、養母もそのつもりで段取りしてくれている。そのせいでチャンミンはいつもより忙しくなってるんだけど。「荷物はぼくが詰めとくね。」「おお、任せる...
命綱 165
- 2019/07/19
- 23:00
本来なら翌日にするべき茶礼をして、トックを食べてから出発した。チャンミンが詰めてくれた荷物はなぜか大荷物で、大きなキャリーバッグといつものデイバッグ。おれならデイバッグひとつで済みそうだけど。「いったい何が入ってるんだい?」「それはまあ、、、いろいろと。」養母にツッコまれたチャンミンは、ほんのり頬を染めて答えている。いろいろ・・・つまりほとんどアノときに使うモノってことだな、うん。チャンミンのこと...
命綱 166
- 2019/07/20
- 23:00
ソウルから釜山まで車で5時間ってとこだけど、連休だしどれくらいかかるか見当もつかない。「疲れたらぼくが変わるし、夜までに着けばいいんだからゆっくり行こうよ。」「なんかチャンミン、頼もしくなったな。」うれしくて、運転席から腕を伸ばして助手席に座ったチャンミンの頭をガシガシ撫でた。「もう、やめてよ~」そんなことを言いながら、照れくさそうに頭を振るチャンミンはかわいいだけなんだけど。前は痩せの大食いその...
命綱 167
- 2019/07/21
- 23:00
渋滞は思っていたよりひどくなくて、途中休憩しながらでも夕方前には釜山に入ることができた。「で、どこに行けばいいんだ?」「えーっと、海雲台マリンシティ展望台だって。」チャンミンが携帯を操作して、ナビを起動させてくれる。無機質で、ちょっとイントネーションが微妙な女性の声が流れ始めた。「マリンシティってくらいだから海の近くなんだろうな。」「いまから行けば夕日がきれいに見えるかもね。」チャンミンの言う通り...
命綱 168
- 2019/07/22
- 23:00
「駐車場で待ってるって。」「おお。」ドンへの車は、すぐにチャンミンが見つけた。ドアに社名が書かれた社用車で来ているらしい。けど、その周りに空いたところがなくて、少し離れたところに見つけたスペースに車を停め、貴重品だけ持って外に出たところでドンへが駆け寄ってきた。「チャンミン!ユノさん!」「よう、ドンへ久しぶり!」あっ?!あろうことかドンへは、おれより先に車の前に出ていたチャンミンに抱きついた。「っ...
命綱 169
- 2019/07/23
- 23:00
「とりあえず、どっか座るか。」車の中は暖房が入っていたのと、窓から差し込む日差しのせいもあって温かかったけど、まだ明るいとはいえ真冬の夕方ともなれば風は冷たくなっている。「うん、そうだね。先輩は顔洗ったほうがよさそうだし。」「ごめん、すぐそこに落ち着く店があるから。」まだ鼻をグズグズいわせながら、先に立って歩くドンへのあとについていく。何かあったに違いないけど、何があったのかまったく見当もつかない...
命綱 170
- 2019/07/24
- 23:00
ドンへはアジュンマと少し言葉を交わしてから、タオルを受け取り、顔を拭きながら向かいの椅子に腰を下ろす。よほど盛大に顔を洗ってきたのか、前髪から滴が垂れていた。あとで訊きに来ると言っていたのにカウンターからコーヒーのいい香りが漂ってきて、どうやらさっきのやり取りで注文していたらしい。ドンへはまだ顔や髪を拭う手を止めなくて、まともに顔を見れていない。おれとしたら早くドンへの涙の理由を聞きたいけど、チャ...