ストロベリーナイト
- 2022/03/15
- 23:01

ソウルに出張するときはいつも泊まっていたホテルがリフォーム中で、急遽探したホテルの最上階。そこにあるバーで出会ったおれの天使、チャンミンのおかげでソウル出張が楽しくなった。普段は離れ離れでも、いまはテレビ電話的な通話ができるから毎日のように顔を見て話ができる。だけど、、やっぱり大好きな人の体温を感じたくて、最近はソウル出張の頻度が増している。『じゃあ、次は6日ね?』「うん、朝母さんのワカメスープを...
ストロベリーナイト 2
- 2022/03/16
- 23:00

以前はソウルにいるのはなんだか落ち着かなくて、できるだけ早く光州に帰りたかった。だから早朝に家を出てソウルで一泊して。翌日夕方まで仕事をしたら車を飛ばして帰る、っていう一泊二日の強行軍で出張していた。だけどチャンミンと知り合ってからは少しでも長くいっしょにいたくて。前日の夜にはソウルに来て、チャンミンと夜を過ごし。いままでより一件に割く時間を長くして、新規開拓もがんばって。二日だったのを三日にして...
ストロベリーナイト 3
- 2022/03/16
- 23:01

その夜は久しぶり、といっても前々週の水曜日に愛し合ったからえっと、、日数を数えているうちに何も考えられなくなる。「ゆの、ゆの、ゆの~っ」昂って舌足らずの発音でおれの名を呼ぶチャンミンに呼応するおれのオレ。ああ、この瞬間がたまらない。生まれてきてよかったって心底思える。「ちゃんみん、、」「ん、、」事後のこの気怠い時間もチャンミンとだからこそ価値がある。「今年の誕生日は、おれにとって特別な日になった。...
ストロベリーナイト 4
- 2022/03/17
- 23:00

「いってらっしゃいませ、チョン様。」言葉も態度もホテルマンだけど、表情のあちこちにおれのカレシ感が漂うチャンミンに見送られて仕事に向かう。早朝おれの腕の中から抜け出したチャンミンは、ホテルのバックヤードにあるというお兄さんといっしょの部屋に戻り。身支度を整えて、いまはフロント業務に就いている。朝食はいつもレストランの厨房で立ったまま食べると言っていたけど、今朝はちゃんと食べられたんだろうか。甘い夜...
ストロベリーナイト 5
- 2022/03/17
- 23:01

「やあ、チョン・ユンホ代表さん、お久しぶりですね。会いたかったですよ。」「いつもお世話になっております、チェ・シウォン代表さん。」大の男が恋人でもない男に向かって『会いたかった』とはあまり言わないと思うけど。この人はそういうセリフをサラッと言ってのける人のようだ。商談のあらましはこの会社の担当者と練ってある。あとはこの代表のサインと印鑑をもらうだけなんだけど。本来ならこんな大きな会社の代表はウチみ...
ストロベリーナイト 6
- 2022/03/18
- 23:00

なんとか契約書にサインと印鑑をもらってホッとして、すぐに帰り支度を始めたおれのとなりに若社長が移動してきた。思わず体が拒否反応を起こしてのけぞってしまう。「さあ今日こそディナーをごいっしょしていただきますよ、チョン、いえ、ユノさん?」許可も得ずに名前で呼ぶとは、取引先の社長じゃなきゃぶん殴ってるところだ。「あなたとは年齢も同じくらいだし、親の跡を継いで会社を経営しているという共通点もありますから、...
ストロベリーナイト 7
- 2022/03/18
- 23:01

「そんな怖い顔、しないでくださいよ。僕はただ、美しい人が好きなだけなんです。」「美しい人って、、」「あなたの『とても大切なご友人』はきっとものすごく美しいに違いないから、一度だけでもお目にかかりたいと思いまして。」こいつはいったい何がしたいんだ?「申し訳ありませんが、あなたにおれの大切な人を紹介する気はありません。」「ふふふ、あなたの『大切なご友人』は『大切な人』でしたか。やはりあなたは『こちら側...
ストロベリーナイト 8
- 2022/03/19
- 23:00

「国を変えるって、、」おれは絶対、めちゃくちゃ間抜けな顔をしていると思う。「ああすみません、言い方がオーバーでしたね。別に政治団体を作ろうっていうわけじゃありません。ただ、少しでも僕たちが生きやすい状況を作っていこうと思っているだけです。」それだけでも結構大きなことだと思うぞ。「すでに何人か、同じ志を持つ人が集まっています。そこにあなたも参加していただけませんか?」「急にそんなこと言われても、」表...
ストロベリーナイト 9
- 2022/03/19
- 23:01

「だけど、僕は父には感謝していますよ。見放してくれたおかげで僕は僕として生きられますから。」自分が自分として生きられる、か。「あなたはいかがですか?」おれは、、「家族はまだ、知りません。」大学生になって以来就職してからも、実家を離れてソウルにいた間は自由に過ごせた。同性の恋人もいて・・・だけど父さんが病気になってからはそれどころじゃなかったってこともあるけど。チャンミンと出会って久しぶりに生きてる...
ストロベリーナイト 10
- 2022/03/20
- 23:00

「そこは、ものすごく美しい兄弟が経営してましてね、」お?「ゲイカップルの宿泊を嫌がるホテルが多いのに、そこは歓迎してくれるんですよ。」おお?「そのふたりもぼくと同じで親から見放されてましてね、」おおお?「手切れ金代わりにもらったホテルをふたりで守ってるんですが、」おおおお?「ちょうどいいからそこを僕たちの事務所代わりにして、何かあるとそこに集まるんですよ。」おおおおお?「あの、、ユノさん、どうかし...