チャンミンの憂鬱
- 2015/12/10
- 00:00
スタジオの片隅、じゃまにならないところにあるテーブルの上には、これでもかってくらいいろんな種類のイチゴがすぐ食べられるように準備されている。ユノが好物はイチゴだとインタビューのたびに答えるから、本当は他の物も言ってるんだけどイチゴが一番似合うっていうかかわいいからか、ユノとふたりの仕事場にはイチゴの差し入れがめちゃくちゃ多い。グラビアの撮影って結構時間がかかるから、合い間にちょこっとつまむには手軽...
チャンミンの憂鬱 2
- 2015/12/10
- 12:00
R-18表現があります。もろもろ大丈夫な方のみ、お読みください。_______________「チャンミナ…」ユノの部屋の玄関でドアが閉まった瞬間、振り向いたユノに抱きすくめられた。まだ靴も脱いでいない。「ヒョン、どうしたんですか?せめて部屋に上げてくださいよ。」「うん、わかってる。でももうちょっとだけ。」ぎゅうっと腕ごと抱きしめられてるから抱き返したくても自由にならなくて、肘から先だけ持ち上げてユノ...
チャンミンの憂鬱 3
- 2015/12/11
- 00:00
ユノの香りに包まれて微睡み、昨夜の余韻に揺れる。目覚めてもなかなか定まらない意識の中でユノがいるはずのほうに手を伸ばしてみたけど、シーツはすでに温度を失っていた。「もう、行っちゃった、か。」今日は昼前にユノひとりの仕事があって、そのあとまたふたりの仕事になる。ユノをちゃんと眠らせるために来たはずだったのに、ぐっすり眠ったのはぼくのほうだったかな。『おれたち、抱き合ってないと眠れないカラダになっちゃ...
チャンミンの憂鬱 4
- 2015/12/11
- 12:00
スタジオに入ってすぐに分かった甘い香りに、ユノがチラッとぼくを振り返って口端を皮肉っぽく歪める。「今日もイチゴ攻めか…」「ヒョンはムリしなくていいですよ、ぼくが食べますから。」「おれのために用意してくれたんだろ?食べないわけにはいかないさ。」「それじゃせめて、ちょっとずつゆっくり食べてくださいw」「努力するwww」ところが…「ユノさん!そんな食べ方したら衣装汚れますよ!」休憩時間にトイレから戻ってきたら...
チャンミンの憂鬱 5
- 2015/12/12
- 00:00
驚いたことに、監督さんがこのやり取りを見ていて撮影で使うと言い出した。お互いに食べさせ合うショット、ぼくは照れくさくて仕方ないのに、ユノは上機嫌でぼくの口にイチゴをほおりこんでくる。「ほらチャンミン、アーン。」ぼくより大きな口開けて、細めた目がうれしそうで、うっかり撮影中だってこと忘れてしまいそうだ。ぼくがユノに食べさせるとき、わざとかどうかわからないけど、イチゴといっしょにぼくの指も唇で挟んで、...
チャンミンの憂鬱 6
- 2015/12/12
- 12:00
「ユノ、何を悩んでるの?」ふたりとも気だるさにくるまれて抱き合う無防備な今なら、教えてくれそうな気がした。「悩んでるっていうか…いつものことだよ。考えたって答えの出ないことばっかり頭の中で渦巻いてる。」「軍隊生活、とか?」たぶんそうじゃないとは思うけど。「あー、訓練とかは問題ないと思うんだ。体力には自信あるし、武道もやってたし。日常生活がなー。」「でもユノ、最近ちゃんと練習してるじゃん。あれを、後...
チャンミンの憂鬱 7
- 2015/12/13
- 00:00
それからのユノは、なんだか別のスイッチが入ったみたいに、ムシャムシャとお菓子を食べながら、ときどき鼻歌まで歌って妙に楽しそうにしていた。「ここでどれだけ覚えても、また現場に行けば変更も出てくるだろうからこの辺にしとこうか。」シム兄さんの言葉で打ち合わせを終え、名残惜しそうにお菓子を眺めてるユノの腕を掴んでダンサーさんたちが待つスタジオに向かっている途中、ふっとユノの体が揺れてぼくにぶつかってきた。...
チャンミンの憂鬱 8
- 2015/12/14
- 00:00
それからのぼくたちは、ユノに起こったことを考える余裕もなく、ライブを成功させることだけに集中していった。ユノも、最初のうちこそショックで戸惑っていたけど、ほとんどは頭じゃなく体が動きを覚えていて、全体リハーサルではチラチラぼくを伺ってたけど、本番ではもういつも通りのユノで、間違えても笑う余裕が出てきたようにみえた。日本のツアーでは、もっと広い会場でやるし、全国の会場ごとに広さや形が微妙に違うから、...
チャンミンの憂鬱 9
- 2015/12/14
- 12:00
「ユノ。」顔を上げたユノの両手で包むようにマグカップを持たせると、しばらくじっとココアの表面からわずかに上がる湯気を見つめてから、唇をカップの淵に当ててゴクンと一口ノドに流し込んだ。「フッ、ちょうどいい。甘みも温度もおれの好みにぴったりだ。やっぱりチャンミンだな。」唇についた膜を舌で舐めとるしぐさが妙になまめかしくて、この場に似つかわしくないなと、胸の中で苦笑する。「ユノ、何があったのか話してくれ...
チャンミンの憂鬱 10
- 2015/12/15
- 00:00
ソファーに隣りあって座り、右腕でユノの肩を深く抱き左手でユノの左手に指を絡めて握った。ユノの体が自然に傾き、ぼくに体重を預けてくる。対等だと意識してからも、ぼくがユノに寄りかかることのほうが多かったから、なんだかくすぐったい気もする。「もしかしてこれが初めてじゃないんじゃないですか?」「うん。」「だから最近元気がなかったんですね。いつごろからですか?」「はっきりとは分からないんだ。おれ、自慢じゃな...