Bloody Love
- 2015/11/05
- 00:00
ぼくたちの村は、人間が言うところの『韓国』という国の山の中の、誰にも知られない場所にある。地図にも載っていないし、道路もない。人間が迷い込まないように周囲には結界が張られているんだそうだ。世界中のどこの国にもぼくたちの仲間はいて、似たような暮らしをしているらしいけど、たぶん一生その人たちと会うことはない。ぼくたちの種族は、いわゆる絶滅危惧種に指定されていて、どの国でも保護されているけど、それを知っ...
Bloody Love 2
- 2015/11/05
- 12:00
ぼくとキュヒョン、それと年下の何人かが最低限の荷物を持って、歩いて村を出た。父さんたちがバス停まで送ってくれて、若い子たちはワイワイと楽しそうに、ぼくとキュヒョンは不安に押しつぶされそうになりながら、街行きのバスに乗り込む。しばらくは山の中をクネクネと走っていたバスが、下っていくにつれて景色が徐々に変わり、見たことのない高い建物が増えてきて、たくさんの車や人が動いていて、バスの中にいても空気が汚れ...
Bloody Love 3
- 2015/11/06
- 00:00
「ひ、ヒョン。窓開けて!早く!!」外の空気が汚れてるって思ったけど、ここはその比じゃない、何の匂いだこれ?ヒョンが慌てて開けてくれた窓辺に、床に落ちてる何だかわからない物体を踏んだり蹴飛ばしたりしながら駆け寄って、深呼吸した。「ヒョン、よくこんなとこで生きてられましたね。」「そうか?そんなにひどいか?」ホントに何とも思わないのか?「ものすごく臭いですけど、何の匂いなんですか?」「さあ?おれこっちに来...
Bloody Love 4
- 2015/11/06
- 12:00
「悪かったなぁ、着いた早々掃除させちゃって。」「いえ、ぼくが勝手にしたことですから。それよりすみませんでした、偉そうに言っちゃって。」「いや、いいよ。汚くしてたおれが悪いんだから。おまえがきれい好きだって知ってたのにな。」片付けて掃除して、きれいになった床にふたりして互い違いに寝転がってボソボソ喋ってるのがなんだかおかしくてクスッと笑った。「やっと笑ってくれた。」「え?」「おまえ、こっち来てからあ...
Bloody Love 5
- 2015/11/07
- 00:00
翌日、全員いっしょに行ったら目立って仕方ないから、みんなバラバラに役所に向かった。これからソウルという大都会で生活していくのに必要な書類と、通帳・カード・携帯電話まで、必要な物は全てもらえて、事前に受けた学力検査と適性検査の結果で、大学や仕事を世話してくれる。ぼくは学力検査はよかったけど、人付き合いに難ありと診断されて、村にいる間にネットを使って大学を卒業していたから、大学院に行くことになった。マ...
Bloody Love 6
- 2015/11/07
- 12:00
それからの数日、ぼくもキュヒョンも部屋の大掃除に明け暮れた。ドンへヒョンの部屋も、ぱっと見、片付いてはいたけど掃除はしてなかったようで、ベッドの下がホコリだらけだったのを見つけたキュヒョンが部屋の隅々まで舐めるように拭き上げた。「なんか、おまえらふたりよく似てるな。きれい好きで人付き合いが苦手でヲタクで。」「ヲタクはよけいですよ。」「そうやってすぐ突っかかるとこもよく似てる。」金曜の夜、久しぶりに...
Bloody Love 7
- 2015/11/08
- 00:00
夢を見ていた。子どもの頃の懐かしい記憶。ヒョンが少し上のヒョンたちと森に探検に行くのを知って、置いて行かれたくなくて連れてってってダダをこねて、きっとヒョンが頼んでくれたんだろう、いっしょに行けることになった。目的の場所に着くまではよかったんだけど、帰り道、ぼくは足が痛くなって歩くのが遅くなってどんどんおいてかれて、ヒョンはちょっと前を歩きながら何度も振り返って、困った顔をした。連れて行ってくれる...
Bloody Love 8
- 2015/11/09
- 00:00
ぼくが狩り場に行けないとなると、本当に手間がかかることになる。なぜかというと、狩り場に来る女性たちの多くはそういう出会いを求めているからハードルが低いけど、一般の場所だと警戒されるからだ。それに、ちょっと好意を持ってくれてるぐらいでふたりきりになるのも難しい。「ヒョンはどうやって自分に好意を持ってる女性を見分けるんですか?」「狩り場なら、向こうから近づいてくることが多いから簡単にわかるよ。でも一夜...
Bloody Love 9
- 2015/11/09
- 12:00
キュヒョンは土曜の夜もドンへヒョンといっしょに狩り場に行って、ヒョンがぼくにしてくれたみたいに血を飲ませてもらったそうだ。「どんな感じ?」「うーん、ビミョー?」なんだよ、それ。「まずいっていうんじゃないけどー美味くもない?みたいな?」ん?何このしゃべり方w「あはは。キュヒョナ、おまえ影響受け過ぎ。」「あぁ、ソンミたちとずっとしゃべってたのかw」ソンミ?誰?「ほら、この間おれたちと待ち合わせしてた。」...
Bloody Love 10
- 2015/11/10
- 00:00
ぼくとキュヒョンは外食をやめてふたりで自炊することにした。経済的なこともあるけど、3月から始まる学校の準備も一日中してたら飽きるし、バイトできるほどこの世界に慣れたわけじゃないから時間が有り余ってるんだ。ぼくたちはふたりとも料理がキライじゃないし、何よりドンへヒョンがものすごく喜んでくれたのもうれしかった。「ただいまー!お、今日は何だ?うまそうな匂いしてるぞー。」毎日、だいたい決まった時間に帰って...