ご挨拶
- 2018/08/01
- 00:00
8月になりました!毎日暑い日が続いていますが、みなさまお元気でいらっしゃいますか?私はまったく夏バテというものになったことがなく、毎年夏太りするのですが今年はさすがに体重が増えません←アツい夏、と言えばSMTOWN!(え?)今年は京セラドームで涼しく観られると思いきや、ガンガンに暑かったです( ̄▽ ̄;)空調とかの問題じゃなく、やっぱり熱気なんでしょうね。実は初日と最終日の2回行けるはずだったんですが、初日は...
深い森 32
- 2018/08/01
- 23:00
@ユノ初めてチャンミン先生さまにお会いしたのは、おれがまだ11歳になる前の寒い冬の日だった。じいちゃんはものすごく我慢強い人だ。なのにあの朝、じいちゃんはおれのと並んだ布団の上で、起き上がれなくてもがいていた。辛そうなうめき声で目が覚めたおれは、気が動転してただオロオロするばかりだった。じいちゃんは、ただ腰が痛いだけだから、じっとしてればそのうち治るって言ったけど、おれは気が気じゃなかった。だって、...
深い森 33
- 2018/08/02
- 23:00
@Yそれでもおれは、なんとかチャンミン先生さまとつながっていたくて、薬を作れる人になりたいと思った。折しも、おれたちの村にも『漢方薬』とかいう、となりの国から来た薬が入ってくるようになって、じいちゃんの甥っ子みたいに、魔術師が作る得体のしれない薬なんかより『漢方薬』のほうがいい、なんて言う人も出てきた。だけど、その薬はチャンミン先生さまが作ってくれる薬と違ってめちゃくちゃ値段が高く、村の人にはなか...
深い森 34
- 2018/08/03
- 23:00
@Yおれが村に帰りついたとき、じいちゃんはもう虫の息だった。それでもおれが布団の横に座り、手を握って呼びかけると、うっすらと目を開け、口元を微かに緩ませて、それから目を閉じて、二度と目を開けることはなかった。村長だったじいちゃんが亡くなったことで、葬式の段取りは親戚がやらなきゃならないけど、となりに住むじいちゃんの甥が、おれがいない間自分が面倒を見ていたからと喪主に名乗りを上げた。けれど、落ち着い...
深い森 35
- 2018/08/04
- 23:00
@Y森の入り口で、じいちゃんに教えられたとおりお願いをして、一歩森の中に足を踏み入れる。外は身を切るような木枯らしが吹いていたというのに、森の中は心地よい温もりでおれを包んでくれた。なぜか幼いころ、じいちゃんの布団に潜り込んで眠ったときの温もりに似ていると思った。たった一度だけ、それもじいちゃんが動けなくなって慌てて来ただけだというのに、なんだかとても懐かしいような気がして、ゆっくり息を吸い込んで...
深い森 36
- 2018/08/05
- 23:00
@Y思い切ってチャンミン先生さまに「弟子にしてください」とお願いしてみたけど、ずいぶん戸惑わせてしまったようだ。何しろおれは魔術師じゃなく、ただの人だから、そんなことが可能なのかどうかもわからないけど、おれは必死だった。断られたら帰る家もない、もう一度町に出る気力もない。どこにも行く当てがなくなって、どこかで野垂れ死ぬしかないんだ。「無茶なお願いなのは十分わかってるんですけど、どうしても先生さまの...
深い森 37
- 2018/08/06
- 23:00
@Yおれは勘違いしていた。薬をもらいにいった小屋は作業するだけで、チャンミン先生さまの家は他にあるんだと思っていたんだ。だって、勉強にいった漢方医の先生は、診療所の裏に立派な家があって、おれたち弟子は診療所の二階の板の間で雑魚寝だったから。弟子入りを認められて改めて見回した小屋の中の、作業場とは反対側の板の間でおれが寝るんだなあって思ってたのに。この小屋でチャンミン先生さまとふたりきりで生活だって...
深い森 38
- 2018/08/07
- 23:00
@Yチャンミン先生さまはまったく変わらないのに、おれだけが年を取っていく。けれどその速さはだんだん遅くなっているような気がした。そして生理現象も起きなくなっていった。それといっしょに、森に来るまでの記憶が、だんだん消えてなくなっている。最初に消えたのは町での記憶。あれほど毎日ほとんどいっしょに過ごしていた仲間たちの顔を思い出せなくなった。もちろん先生の顔なんて一番先に忘れた。けれど、薬草に関する知...
深い森 39
- 2018/08/08
- 23:00
「スマン、さま、力が弱っている、というのは、、?」ぼくはまだ、夢の中にいるのだろうか。「ふむ、どこから話せばええじゃろうかの。」スマンさまは視線を宙に浮かせて、あごを手のひらで撫でる。スマンさまのいつもの飄々とした態度はまったく変わっていないのに、なんだか胸の内がぞわぞわと落ち着かない。「あー、長い話になりそうじゃから、脚を崩して楽にしてくれんかの。」ぼくはユノに目配せをして、正座から胡坐に座りな...
深い森 40
- 2018/08/09
- 23:00
「人はいつからあれほど欲深になってしまったのかのう。最初は創造主さまの御心どおり、足るを知り、控えめで、みなで分け合うということを知っておったのに。」スマンさまがいつ頃のことを思い出しておられるのかわからないけど、寸の間遠い目をしてから、ぼくたちを等分に眺めた。ユノはまだ視線を上げない。「ところが結界で外の世界とのつながりを絶ってしまったら、森の気が弱ってしまったんじゃ。」「え?どうしてですか?」...