シルクとコットン 348

『はい、テハン病院です。』



コール音が１回鳴り終わる前に、若い女性の声が聞こえてきた。



「わたくしチョン・ユンホと申しますが、事務長さんをお願いします。」



『チョン・ユンホさまですね。しばらくお待ちください。』



音楽が流れていたのはほんのわずかの間。



『もしもしっ』



勢い込んだ事務長の声が聞こえてきた。



『お引き受けいただけますね！』



「あ、いえ、やはりお引き受けはしかねます。」



『は？どうしてですか。あの金額では足りませんか？』



はあ？何言ってんだ。



あんなべらぼうな金額提示しといて、足りないか、だと？



「いえ、金額は十分過ぎるんですが、先日も申しましたように私どもの店ではあのような大量発注は扱いかねますので。」



『ですから期限は設けないと申し上げましたでしょう？』



「それでもウチの業務に支障が出ます。わたしはお客さまおひとりおひとりと向き合う仕事がしたいんです。」



『そんな、、お願いします。お引き受けいただかないと私が首になってしまいます。』



「は？」



『ですから絶対にお引き受けいただかないと困るんです！』



「いや、そんなことをおっしゃられましても」



『お願いしますお願いします！お願いしましたからね！』



ガチャン！



いきなり大きな音を立てて電話が切られ、おれはしばらく呆然と電話機を見つめていた。










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