シルクとコットン 352

ミンソプはカン家とイ家の繋がりを調べてみると言って帰っていった。



本来なら昼からの出勤なのに緊急事態だからと朝一から来てくれたトゥギヒョンは、自分の机でパソコンに向かって自分の仕事をしている。



おれは、久しぶりにスケッチブックを広げて鉛筆を手に持った。



パソコンやタブレットで描くこともできるけど、おれはやっぱり紙と鉛筆がいい。



アナログ人間と笑われてもこれだけは譲れない。



マダムリー母娘が慈善パーティーに着ていくためのドレス。



イメージを絵にするのはすぐにできたんだけど。



問題は、どのニットを使えばほしいラインを出せるかがわからないこと。



「うーん、やってみるしかないか。」



「うん？」



「悪い、３階に行ってくる。」



「わかった。がんばれよ。」



パタンナーの部屋にデッサン画を放り込んでおいて、倉庫からニットのサンプルを全部抱えてきた。



目分量でスカート一枚分の生地を切り、真ん中にウエスト分の穴を開けて下半身だけのトルソーにかける。



10枚の生地を同じようにかけては外しを繰り返して。



「うん、これだな。」



「ニットでこれを？」



「はい、やってみたいなと思って。」



ベテランのパタンナーはちょっと渋い顔をしたけど、すぐに肩をすくめた。



「まあ、何でもやってみないとわからないからな。」



気難しいところのある人だけど、おれのやる気は買ってくれている。



もう一枚少し長めの生地でやってみて。



「やっぱり長さが変わるとシルエットも変わるな。」



「そうだろうな、多少でも重さが変わるから。それにしてもこの生地は柔らかくて軽い。いい綿だ。」



ベテランでいろんな生地に触れてきたこの人がそう言ってくれたら、おれも自信を持ってお客さまに勧められる。



「ありがとうございます。じゃあ、これとこれと、それからこれにします。」



生地のロット番号を確認して、電話で工場長に指示を出した。










最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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