
「いままでだって何人かはいたんだ、そういう要領の悪いヤツが。」
その言い方にムッとして、先輩の顔を睨みそうになったけど、となりのチャンミンの手がそっとおれの膝に触れた。
「汚れが残ったって、こうやって動物に入れちまえばいいんだからさ。」
そう言って、無造作に魂を器に放り込む。
「あ」
「あの!どうしてそれが最近増えたんですか?」
「それがどうやら人間界の気が乱れてるらしい。」
人間界の気?
「俺もよくはわかんねえんだけどよ。とにかく、回収された魂のうち、汚れてるのがずいぶん増えて、その汚れ方がどんどんひどくなってるってよ。」
人間界の気、とやらが乱れて、罪を犯す人が増えてるってことか。
「でもよ、魂なんていくらでもあるんだし、傷がついたら葬りゃいいことだろ?そもそも汚れが落ちないほど罪を犯した魂じゃねえか、なあ?」
いつもいっしょに仕事している仲間たちに同意を求めると、みんな異口同音に賛成の意思を示す。
おれもチャンミンもうなずくことも声を出すこともできないでいた。
「実際どうしたって葬られる魂があるってのに、神様が慈悲心を出してできるだけ生かすように、なんて指示出さなけりゃ、魔界に落とされる天使だっていなかっただろうによ。」
最後はおれたちに話すというより、ひとりごとみたいに言い捨てて。
おれたちの反応も気にせず、向こうを向いて仕事に戻る。
おれは先輩の話を飲み込み切れずに、そのままうつむいて足元を睨んでいた。
人間界がどうなっているのかはわからない。
だけど、おれたち天使が危険にさらされているのは間違いなさそうだ。
それも、神様はできるだけ多くの魂を生かすようにと指示されたせいで起こっているなんて。
つまり、神様の慈悲深さが、結果天使を危ない目に遭わせているってことなんだな。
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